【短】ブランシュ・グロウ
「体質かなんかだと思うんですけど…冬だけが熱くて。耳カイロです」
「耳カイロって」
「へへ、耳カイロです」
はにかむ彼女に、どぎまぎしながらの「送ります」。言葉が詰まった。
「へっ」
すっとんきょうな声を出してきたので、帰るんじゃないんスかと一歩前に出る。
小さく同意はしたものの、送ってもらうことに対して、申し訳なさがあるのか、何か言いたげ。
おれが送りたいんです、なんて言ったらどんな顔すんだろ…なんて。質がわるいか。
「どうせ、同じ方向なんで」そう言って、チャリの鍵をポケットから出した。