僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
prologue
きみに出会ったのはいつだっただろう。
なんて、自分に訊くまでもなくはっきりと憶えている。
空の色だって、風の匂いだって。
ふわりと笑う、きみの顔だって、全部。
ひとりで帰った暗い空に、そっと手を伸ばしてみたあの日。
いつもとは違うことなんて、何ひとつだってなかったけれど。
確かに変わった。世界が変わった。
今になって、そう思う。
はっきりと憶えているその瞬間を、いつか忘れてしまったとしても、大丈夫だって、構わないって、強く頷くことができるのは。
きみが見せてくれた世界が、今、ここにあるからなんだと。
それは全部、きみとの出会いがあったからなんだと。
大きな声で叫べるんだ。
世界はすべてが美しい。
そんな綺麗ごと、今もわたしは思ってないけど。
でも、もしも、きみと同じ景色が見られるようになった今。
その綺麗事を、本当のことだと信じるのなら。
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