僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

「じゃあ、送ってく代わりに」


ハナが、パッと両腕を広げた。

またきょとんとして、ぽーっと立ち尽くしているわたしに、ハナはひとつ微笑んで、それから。


「…………」


声をあげる暇すらなかった。

気付いたときには腕の中。

ぎゅっと包まれた状態で、こめかみのあたりを、ふわふわの毛がくすぐっている。

ハナの温度と柔らかな匂いが、どこよりも近くでわたしに伝わる。


「……なっ……」


なんで、なにが、どうなってる。


叫び出しそうで、でも、声が、出ない。


「な、なに……」

「セイちゃんがきちんと家に帰れるおまじない」


どうにか絞り出した声。裏腹に、ハナの返事は、いつもどおりの声だった。


「こ、こんなことされたら、余計にきちんと帰れない……!」

「そう?」


あたりまえ。体中がふっとうしそうなのに。

全身の熱がぐるぐる回って、顔なんて真っ赤に決まってる。

心臓がバクバク音を立てて、夜空の向こうまで、届いてしまいそうで。

こんなに近かったらハナにだって聞こえちゃう。


こんな、こんなに近くに、きみが、いるせいで。


「あとね、セイちゃんがもう、ひとりで膝を抱えないように」



ハナの腕が解かれていく。

少しだけ開いた距離。

でもまだすぐ側にいるきみ。
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