僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
胸の奥で、何かが止まった気がした。
電源を切るみたいに、ブツンと、世界が、途端に、色を失くした。
「もう戻れないなら……言ってよ、ちゃんと。そんな風に怒鳴り合わなくてもいいから、もう、わたしに」
言葉を発するたびに震えが大きくなる。
冷えていた体中が、一気に、中心だけを残して、熱を、廻らせて。
「わたしにちゃんと言って! もう要らないんだって!!」
息が苦しい。
心臓が痛い。
吐いてしまいたい。
大声で泣きたい。
「邪魔ならそう言ってよ。わたしが居ない方が好きに生きられるって。そうなんでしょ、そうしたら今みたいに怒鳴り合わなくて済むんでしょ。いいんだよ、だって、どっちにしろ、お父さんとお母さんが離れちゃったら、わたし……」
目を、見た。ふたりの目。
何を思っているのかは、わからなかった。
「わたしには、何の意味もないよ」
持っていたものを、すべて割れた破片の上に落とした。
カバンも、ケーキが3つ入った箱も。
それがどうなったかなんて見ないまま、走って玄関を飛び出した。
「星っ!!」
声が聞こえたけど振り向かなかった。止まりもしなかった。
何もかもをからっぽにして、どこかに向かって、走っていた。