僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

空を見上げていたハナは、わたしの声に、ゆっくりと視線を下げた。


「……セイちゃん」


ハナも驚いているみたいだった。

わたしが今、この場所に居ることに。


「なんで……ハナ、まだここに、居るの」

「セイちゃんこそ、どうしたの」


わたしは。

と、言いかけて、言葉が、出なかった。


ハナがしくしくと草を踏んで丘を下りてくる。

立ち竦んだわたしの前に来て、右手で、頬を包んで。


「どうしたの」


もう一度、そう訊いた。


「……っ……!」


二度目の問い掛けにも答えることができなかった。

喉の奥が詰まって、息も出来なくて。

体の中心から、何かが、込み上げてくる。


「セイちゃん」


ふわりと温かな温度に、夜の冷たい風が遮られた。

少しだけ苦しい。でも、とても、安心する。


「ねえ、セイちゃん」


きみの肩越しに見える景色、それは、綺麗ではない星空で。


「泣きたい?」



いつか聞いた言葉だった。

あのときわたしは、泣きたくないと、答えた。


泣いてしまえば、今まで心の奥にしまっていたものすべてが、涙と一緒に溢れてしまいそうな気がして。


泣きたくは、なかったんだ。



「……泣き、たい」

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