僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

わたしを包んでいたハナの腕に、ぎゅっと力がこもった。

真っ黒に汚れた世界から、わたしを隠すみたいに。


ハナの匂いがした。

ふんわり甘い匂い。

柔らかな髪の毛が鼻の先をくすぐる。

わたしのおでこに触れた頬は、少しだけ、冷えていた。



「いいよ、セイちゃん」



耳元で、声がした。

じわじわと湧き上がってくる熱い感覚。

唇が震える。

背中に回した腕で、ハナのカーディガンを握り締める。


「……っ……ぅ……」



為す術はない。


何も見えないこんな世界で、ただひとつ色を持つ場所が、この、きみの側なんだから。


わたしにはもうどうしようもない。

この涙を止められない。


喉を擦り切る大きな声も、きみの背中を逃がさない腕も、零れ出た、いろんな思い出や感情も。

わたしにはどうしようもないのに、こんなにも、溢れてしまって。



「もうっ……いやだ……!!」


止まらないよ。

だって、ずっと、本当は、こうやって。



「わたしなんか……消えちゃえばいい!!」



ずっとずっと、叫びたかったんだ。

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