僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
「……ありがとう」
ぽつりと、口の中で呟いた。
変かなって思ったけど、他に何を言えばいいのかわからなかった。
お父さんもお母さんもわたしを見つめて、それからまた余計に恥ずかしげもなく泣くから。
わたしも泣きそうだったのになんだか気が抜けて、仕方がないからへらっと笑った。
まあいいか、と思う。
泣きたかったけれど、泣けなくなったこと。
まあいいんだ。きっと泣かなくたってよくなっただけだから。
だってこんなにも心の中、あたたかな気持ちになっているんだから。
泣くよりは笑った方が、なんか、お得な気がするし、お父さんとお母さんも泣きながら笑ってくれたから、よしとしようと思う。
──少しだけ、明るくなったような気がする。
明日から、きっと、世界は何ひとつ変わっちゃいないけれど、あの丘の上から見る空は、もしかしたら、今日までよりもずっと青く見えるかもしれない。
そう、きみの目がファインダー越しに見るその景色と、おんなじような、晴れた青に。
わかんないけれど。どうせ気のせいだけど。
それでもその気のせいを、精一杯、大きな声で、きみに伝えてみたいんだ。
きみが引っ張り上げてくれた世界には、光が確かにあったから。
真っ暗闇だと思ったそこには、小さな星が、煌めいていたから。
わたしはそこで、もう、膝を抱えずに、ちゃんと立ち上がってみようと思うよ。
だから、ね。
はやく、はやくきみに。
会って、話したいことがたくさんあるんだ。
ねえ、ハナ──
明日も、きみに会えるかな。