僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
「ハナ」
空か、鳥か、楓の木か。丘の一番高いところから真っ直ぐと、どこかにカメラを向けているところだった。
ハナはレンズを下ろすとこっちを向いて、ふわりと笑う。
「セイちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
本当は少し気恥ずかしかった。昨日のことで、いろいろと、カッコ悪い部分を見せちゃったから。
でもやっぱり会いたかった。
会って、言いたいことがたくさんあった。
だから会いに来た。
「今日のセイちゃん、素敵だね」
「……わたしはいつも素敵です」
「そうだった」
丘を登っていくと、ハナがいつものようにぺたりと座り込むから、わたしもその横に並んだ。
休日でも公園はいつもどおり静かで、この丘のまわりも相変わらずわたしたち以外誰もいない。
鳥が3羽、飛んでいた。
寄り添うように、ひとつになって、何もない空を駆け抜ける。
だけどそのうちかたまりは、ゆっくりと、1羽ずつに離れていった。
それぞれの場所へ。行きたいところへ。
「ねえ、ハナ」
「ん?」
「あのね」
まだ、昨日の夜のことは憶えているはずだ。
それでも訊いてこないのは、わたしから、言わなきゃいけないことだからなんだろう。
少しだけ、間を置いた。ハナは言葉の続きを黙って待っていた。
見上げた空は青い。
とても綺麗で、気分が良かった。
「うちの両親、離婚することになった」
ハナはちょっとだけ驚いた顔をした。
だけどそのあとそっと微笑んで、「そっか」とだけ答えた。