僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
歩く道の先は、ゆっくりと藍色に包まれていく空。
太陽は背中の方に落ちていって、地面に影が長く伸びる。
ハナの影の方が少しだけ長い。わたしたちが歩くのとおんなじようにその黒い分身は進んでいって、でも、ぴたりと、長い方の影だけが止まった。
「……どうしたの?」
わたしも立ち止まって振り返る。右手と左手だけで繋がった、少し距離を空けた後ろで、ハナはじっとわたしを見ていた。
夕日を背負っているせいで眩しかった。ハナの顔が、あまりはっきりと見えない。
「セイちゃん」
声は、透き通ってよく聞こえた。ほかの音が一切聞こえなくて、ハナのその声だけが、わたしの中へ沁みていく。
「ありがとう。きみに会えて、本当によかった」
ハナ、どんな顔してるの。
ハナ、わたしは今、どんな顔してる?
「きみは俺の宝物」
ハナ、わたしまた、あのときと同じ顔しちゃってるんじゃないのかな。
きみと全然違った顔。
でも今は、きみも、おんなじ顔をしちゃっているね。
ハナが、わたしの瞼にひとつ小さなキスを落とした。
すぐ側で見るきみはとても綺麗で、嬉しくて、だけどすごく、涙が出そうで。
行こうか、と握り返してくれる手を、離れないようにきつく包んだ。
側に居てね、側に居るから。
そう、繋いだ手に、祈ることしかできなかった。