僕は何度でも、きみに初めての恋をする。




公園に着いた頃、まだ空はオレンジ色だった。

入口に原付を止めて、さっきも通った場所を走って行く。


丘の下に人が立っていた。

見慣れた顔だった。

でもそれは、わたしが会いに来た人じゃない。


ハナの、お兄さん。


「お兄さん!」

「……セイちゃん?」


急いで駆けて行ったのは、様子が変だと思ったからだ。

ただ通りかかっただけにも、ときどきそうするみたいに気まぐれにハナを迎えに来たわけでもないみたいだった。


お兄さんは“何か”を、探している。


「どうしたんですか?」

「セイちゃん、ハナと一緒じゃなかったの?」


返ってきたのはわたしの問いへの返事じゃなかった。

でも、答えも同然の返事だ。


お兄さんが今、“何”を探しているのか。


ここには居ない、きみを。



「どうしたんですか。ハナはどこに? わたし、少し前までは一緒に居たんです」

「ハナ……あいつ……」


お兄さんの顔が歪んだ。

咄嗟に覆った瞳から、涙が落ちるのを、わたしは見た。
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