僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

公園の奥には、何のためにあるのか知らないけれど、小さな丘がぽつんとある。


つまらなすぎて誰も寄り付かないその場所に。

いつも、きみは居る。



──カシャ



シャッターを切った。

きみが振り向く。


ファインダー越しに見えた、ちょっと驚いた顔に、わたしはもう一度、シャッターを切る。


──カシャ



乾いた音がした。

きみが、少しだけ微笑んだ。


「こんにちは」

「こんにちは、勝手に撮ってごめんね」

「いや、いいよ。俺も今、写真を撮ってたところなんだ」


きみの手にはいつものカメラ。

そのレンズは、何度も何度も、わたしに向けられたことがあるって、きっときみは、知らないんだろう。



「こっちにおいでよ。ここからなら、綺麗な景色が見えるよ」

「うん」


丘をのぼる。そうしてきみの隣に立つ。

そこから見える景色は、きみと初めて見たあの日のそれと、何ひとつ、変わってはいなかった。


だけど違う。同じじゃない。


あの日と違う色の空。違う風。違う楓の葉。少し背の伸びたきみ。


新しい日々。

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