僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
息を吸った。風が吹いた。
ハナの手が、わたしのそれをふわりと握る。
温かかったのはたぶん気のせいじゃない。体温なんてそんなに違わないはずなのに、自分のじゃない誰かの温度って、こんなにも、温かかったんだなあって、なんか、気付いた。
「ねえハナ、わたしお腹すいた」
「なら何か食べようか。何がいい?」
「わらびもち」
「じゃあ、わらびもち屋さん探さないと」
ハナが飛ぶみたいにして階段を下りていくから、わたしも不恰好にそれを追いかけた。
街はまだまだ低いところに見えて、だから、まるで本当に空を飛んでいるみたいだった。
太陽は随分と高い。
デートと言う名の小さな冒険は、きっとまだ、終わらない。
──ハナ
と、意味もなく名前を呼びたくなった。
だけど心の中だけで。口に出しては言わなかった。
背中を追いかけながら、掴まれた手を、ちょっとだけ握り返してみた。
ハナは何も言わなかったけれど、指先にぎゅっと力がこもったのがわかったから、わたしは思わず、なんにも無い空を見上げた。