僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
─Ⅳ─ Lilac


「三浦さん」


お昼休み。

お弁当を食べ終えて次の授業の準備をしていると、たまたま三浦さんがひとりで居たから、ちょうどいいと思って声を掛けた。

普段わたしから声を掛けることなんて滅多にないから、相手がわたしだったことに三浦さんはちょっと驚いたみたいだ。でもすぐに、ふわりと表情を緩めてくれる。


「倉沢さん、どうしたの?」

「これ、この間言ってたやつね、持って来たんだけど」

「うん?」


手渡したのは、わたしが使っていた原付免許を取るための問題集。

買ったはいいけれど試験は一度きりだし、その一度きりも実は大して勉強しなかったから、まだその本の綺麗さは新品とほとんど変わらない。


「え! ほんとうに借りちゃっていいの!?」

「うん。それに返さなくてもいいから。まわりでまた取る人いたら、譲っていいよ」

「うわあ、嬉しい! ありがとう!」

「いいよ。だって1回取っちゃえば、もう使わないしね」


それもそうだ、と三浦さんは笑いながら、ぺらぺらと適当にページを捲った。

それから少し顔を引きつらせて「が、がんばってみる……」と呟いていた。

そういえば三浦さんは勉強が苦手だって言ってたなあ。わたし的は学校の勉強なんかよりよっぽど楽しかったから、続けられそうな気もするけど。


「あ、そうだ」


席に戻ろうとしたところで、でもふと思い出して振り返った。


「ねえ、三浦さんってさ」

「うん、なに?」

「確か東中の出身だったよね」
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