僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
ハナが、通っている高校を教えてくれたとき。あとから行っていた中学校のことも教えてくれた。
三浦さんが通っていたところと同じ、市立の東中学。
そのときに不思議だったのが、高校はメモを見ながら教えてくれたのに中学校の名前はそれを見ずに言えていたこと。
なんとなく、ハナ本人にそのわけを訊こうとは思えなかった。
ハナも、どうしてそれは憶えているのか、わたしに言いはしなかったし。
かと言ってやっぱり気にならないってわけじゃなく、こうして知っていそうな他の人に訊いてしまっている。
わたしの知らないハナのこと。
「倉沢さん、芳野先輩と知り合いなんだ?」
「う、うん……ちょっと」
どんな関係かって、突き詰められると困ったけれど、三浦さんはそういうことは訊かなかった。
「まあ座りなよ」とまるで自分のものみたいに隣の席をポンポン叩いて、立ちっぱなしだったわたしを座らせて目線を合わせる。
「あたし、先輩とは全然関わりないんだけど、うちの兄貴とさ、芳野先輩のお兄さんが同学年で。まあそうじゃなくても芳野先輩のこと知らない人、うちの学校にいなかったと思うけどね」
「ハナ……お兄さんいたんだ」
「うん。すんごいかっこよくてさ、しかも頭いいんだって。うちの兄貴と違ってレベル高い大学行ってるらしいよ」
「そうなんだ」
三浦さんの言い方が、ハナのお兄さんを褒めているというより自分のお兄さんを貶している方が強くて、失礼だけど少し笑えた。
そうしたら三浦さんも一緒になって笑うから、この人は、わたしなんかよりもずっとハナと気が合いそうだなあと思った。