僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

……いつの間にか、足が止まっていた。

見上げていたはずの顔も、地面に立つつま先を見て。両手はぎゅっとスカートを握って、唇を、痛いくらいに噛み締めている。


「…………」


だめだ、と、思った。

今日はもうだめだ。

本当に、きつく唇を結んでいなきゃ、今にも何かが零れそうで。


気付いたときには別の場所に向かっていた。

学校へ向かう通学路じゃない道を。走って。肺とか足の痛みなんて無視してひたすらに。

体だけで、心は置いて逃げるみたいに。

なんにも考えずに、どこかに向かって走って行った。




体中の痛みと息苦しさがやって来たのは、ようやく立ち止まった瞬間にだった。

心臓の音はまるで耳元で鳴っているみたいで、体の外にまで聞こえてしまいそうなくらいに大きい。

何度空気を吸っても足りなくて、乾いた目からだって、理由のない涙が出てくる。


今すぐ大の字になって寝転がりたかった。

でもそれをしないのは、ここが外だからとかそんな理由からじゃなくて。


ただ、そこにいるきみから、目を、離せないから。

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