僕は何度でも、きみに初めての恋をする。
「セイちゃん」
いつものあの公園。その丘の上に居るハナは、驚いたみたいにわたしを見ていた。
たぶんわたしも、同じ顔でハナを見ていたと思う。
だって、なんでこんなところにきみがいるんだろう。駅前のラッシュとは全然違う、人なんてまったくいないここに、きみがいるわけなんかないのに。
会いに来たけど、会えるなんて、思ってなんかいなかったのに。
「……ハナ」
「おはよう、セイちゃん」
ハナの表情は、すぐにいつものふわりとしたものになった。
それを見上げていたら、なんだか張り詰めていたものがパンとはじけて、わたしはへなへなと、空気が抜けるみたいにその場に座り込んでしまった。
三角に膝を折って顔を埋める。心臓は苦しくてかかとはたぶん擦り剥けてて、もう、なんか、全部が痛い。
「セイちゃん? どうしたの」
珍しく慌てた様子のハナが、しゅくしゅくと芝を踏んで下りてくるのがわかる。
でもわたしは顔を埋めたまま、何も応えられないし、目も合わせられない。
「セイちゃん」
ハナがわたしの名前を呼びながら、わたしの前にしゃがみ込んだ。
「どうしたの。何かあった? お腹痛い?」
「…………」
わたしは何も言えなくて、ああ、呆れられるかなあって、小さな狭い自分だけのスペースで息を吐いた。
ほんとにわたし、子どもみたいだ。
ハナも付き合わなくていいんだよ。こんなわたし、呆れて放って、どこかに行っちゃっていいのに。
でもハナは、どこにも行かない。
何も言わないわたしに、もう何も訊かない代わりに、両手を軽く握ったままで、わたしの顔が上がるまで、黙って側に居てくれて。