ロストバージン·レクイエム

気軽に「おいで」と言われたものの、彼が住んでいるのは社宅だ。誰に会うかわかったものじゃない。

見られたが最後、あっという間に社内の噂だ。

炊飯器まで買わせたのに私は怖じ気づいた。

社宅に行って誰かに見られたりしたら迷惑にならないかな?
と、メールを送ると

迷惑になんかならないよ。気にしないで。

と返ってきた。

いやいや、私が気になるんだよ。
と、ツッコミたかったけど、やめた。

今はまだ、彼より自分の方が大事みたい。
でもそれを悟られちゃ駄目だ。

誠実と正直は別物。

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