朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
男は再び剣を上げ柚に襲い掛かった。


柚は腰を落として相手の間合いにすかさず入り、男の脇腹を木刀で思い切り打ちこんだ。


男は声も上げずに、弱々しく膝から崩れ落ちると、次の瞬間、一瞬にして姿が消えた。


男がいなくなった場所には、人型の白い紙が風に揺られてひらひらと舞い落ちた。


「どういう……ことだ?」


 柚は思わず呟いた。


呆気に取られて人型の紙を拾い上げると、たれ幕の間から大きな声がした。


「そこにいるのは誰だ!」


 柚が驚いて顔を上げると、たれ幕から出てきたのは険しい顔をした貴次だった。


「わっわわ!」


 柚は慌てて顔を隠した。


しかしすでに目が合ってしまっている。


「あなたは……朱雀の巫女」


 やっぱりバレてしまったかと思って、柚は観念して顔を上げた。
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