朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「男装などをして、ここで何をしていたのです?」


「ちょっと、宮内を探索してみようと思ったんだ。そしたら突然男に襲われて……。けれど木刀で打ったら、紙になって消えてしまった」


 柚は貴次に人型の白い紙を見せた。


貴次はその紙を受け取ると、眉を寄せて凝視した。


「これは……式神」


「式神?」


「陰陽道では式札と呼ばれる和紙札に術法をかけると、異形の者へと変身し使役者の意図通りに動いてくれるらしいのです。こんなものがなぜ……」


「あれが式神なら、物の怪ではないということか?」


「物の怪は、怨霊、死霊、生霊などの総称です。式神とは根本的に違います」


「それなら、私は誰かに命を狙われたということか。一体誰に……」


 柚は顎に手を置いて頭を巡らせたが、全く見当もつかない。


そんな柚をじっと見ていた貴次が重々しい様子で口を開いた。


「このことは帝にはまだお伝えしないで下さい。

朱雀の巫女の命を誰かが狙ったとお知りになったら激怒することは目に見えています。

冷静ではいられますまい。

こういうことは内密に探ることが賢明です。

分かりましたね?」
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