朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 柚も、暁がこのことを知ったら、確かに怒りそうだと思った。


あまり大ごとにはしたくないし、外出禁止なんて言われたら最悪だ。


「分かった。内緒にしておく」


「ですが、問題は巫女の身の振り方ですね。

誰かに命を狙われていると分かった以上、このまま放っておくことはできないですし……」


「それなら大丈夫だ! 言っただろ?

式神は私が倒したんだ。武器がないと心許ないけど、この木刀さえあれば自分の身は自分で守れる!

私は意外と強いんだぞ、ほら!」


 そう言って柚は得意気に木刀で素振りを披露した。


柚の天真爛漫な様子に、最初は驚き言葉を失っていた貴次だったが、ふいにプッと笑い出した。


しまいには堪えられなくなったのが、腹をおさえて笑い出した貴次を見て、どうして笑うのか理解できない柚はきょとんと素振り姿勢のまま固まった。


その間抜けな顔が、さらに貴次の笑いのツボを刺激する。


「あなたは面白い女(ひと)ですね。男装もとても板についていますし。こんな変わった女性、初めて見ました」


「そ、そうか?」


 柚は褒められたのか、けなされたのか判断できなかったので、どんな顔をすればいいのか分からず困ったような顔になり、こめかみを指先でポリポリと掻いた。


どちらか分からない時は、褒められたと解釈しよう、うん、そうしようと柚は一人で納得した。
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