朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「暁とは、毎晩一緒に寝てるだけだ。お前が想像するようなことはしていない!」


「まさか、あり得ないでしょう。あの手が早い帝が、何もしないだなんて」


 手が早い……。


柚はそのフレーズに少し引っかかりを覚えたが、由良から帝は今まで妾を作らなかったと聞いていたので、まさか暁が好色家だったとは思いもしなかった柚は、軽く流した。


実際は、特定の妾を作らなかっただけで、女性経験がないわけではなかった。


大抵一度きりで終わるので、お手付きと呼ばれる女性は沢山いたが、妾まで昇格するほど足繁く通った女はいなかったというだけの話だった。


由良はうぶなので、そういう話を聞かなかったのだ。


「本当だ。暁は優しいから、私が嫌がるようなことはしないんだ!」


 貴次は手で口を押さえ、目を泳がせた。


(まさか、あの帝が……。

しかし嘘を言っているようには見えない。

本当に手を出さず、それでも毎晩一緒にいるのだとしたら。

帝はよっぽど、朱雀の巫女のことを……)


「それに、暁は私のことをいつも気にかけてくれるし、大切にしてくれるし、心配もしてくれる。

貴次とは違って高圧的な態度だって取らない! お前と暁は全然違う!」
< 131 / 342 >

この作品をシェア

pagetop