朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 柚はついむきになってしまって、いらないことまで喋りすぎた。


これには貴次もカチンときたので、思わず意地悪を言った。


「随分と帝を買い被っているようですが、あなたは自分の立場をお分かりですか?

まさか帝があなたを気に入ったから妃にしたとでも思っているのですか?

それは気にかけて大切にするでしょうねぇ。

あなたは朱雀の巫女なのだから。

朱雀の巫女の強大な力を手元に置きたいという帝の野心に気付いていないのですか?」


「それは……」


「あなたは帝に利用されているのです。

帝は皆の前ではっきりとおっしゃいましたよ。

物の怪の脅威がなくなれば、朱雀の巫女は用なし。

次は己が気に入る高貴な娘を妻に娶ればいいだけの話だと。

偽りの妃であることに気付かず、帝から寵愛を受けていると勘違いしているのではないですか?」


「そんな……。暁は、私の力を利用したいだけ?」


 柚はショックで膝が震えてきた。


優しいと思っていたあの笑顔も、あの態度も、全ては朱雀の力を利用するためだけに……。


 激しく動揺する柚を見て、貴次は満足気に微笑んだ。


「本当にあなたを想っているのは誰なのか。きちんと見極めてください。私はあなたの側にいます」
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