朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
 暁の様子もおかしかったが、貴次も何やら忙しそうだった。


 日中の稽古も、柚と稚夜だけでやる時間が増えていき、稚夜の勉強時間前に貴次がいなくなることが多かったので、二人きりになることもなかった。


 柚は少しだけほっとして、稚夜との稽古を毎日楽しんでいた。


けれど、暁や貴次の様子を見ていると、何かが起きているということは明白なので、蚊帳の外に置かれ教えてもらえない寂しさを募らせてもいた。


 ようやく何があったのか教えてもらえたのは、暁が旅立つ前日の晩のことだった。


「地方豪族の討伐に行く?」


 柚は暁に言われた言葉をオウム返しで聞き返した。


柚の部屋で珍しく酒を飲んでいた暁は、脇息にゆったりと肘を置き、再び口を開いた。
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