朱雀の婚姻～俺様帝と溺愛寵妃～
「万が一のことも考えて、柚の部屋に強力な結界を張っておく。

窮屈だろうが、余が帰ってくるまで日中でも部屋から出てはならぬぞ」


「そこまで徹底しなくても大丈夫だって」


「余が心配なのだ。たった数日だけの辛抱だ。部屋から出ないと約束してくれるな？」


「暁がそこまで言うなら、分かったよ」


「ありがとう」


　暁は柚をぎゅっと抱きしめた。


抱きしめられながら、柚は気分がどんどん沈み込んでしまっていた。


　暁がいなくなることが寂しいとは言えなかった。


暁の身が心配だし、物の怪は確かに怖いけれど、一方で距離を取れるいい機会でもあるかもしれないと思った。


毎晩一緒にいるから、寂しいと思うんだ。


距離を取りさえすれば、それが普通になって暁の言動にいちいちドキドキすることもなくなるだろうと思った。


だから、悲しい気持ちになる必要なんてないんだと、柚は自分に言い聞かせた。


しかし、なぜか言い知れぬ不安感に包まれて落ち着かなかった。


暁と離れることが寂しいからか、暁の身が心配だからなのか、はたまた嫌な予感がするからなのか、理由は柚自身でも分からなかった。
 
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