朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「いいのだ。余はここの方が落ち着く。それに、柚がいない寝床はどこで寝ても同じだ」


「そうですか。まあ、見張りの者もおりますし、ここら一帯は山賊も出ない安全な場所だと伺っております。

動物にさえ気をつけていれば問題ありますまい」


「貴次、余を誰だと思っておるのだ。山賊だろうが動物だろうが余の敵ではない」


 貴次は苦笑いを見せた。


確かに暁は誰かに守られなければいけないほど弱くはない。


家来たちも命を懸けて帝を守ろうと頑張ってはいるが、本当のところ守られているのは家来たちの方だった。


しかしそれを認めてしまえば、帝に尽くす者として立場がないので、貴次は苦笑いするしかなかった。


実際この討伐も、家来たちを沢山引き連れてきてはいるが、貴次と暁の二人だけの方が移動は楽だった。


「それよりも物の怪の方が厄介だ。平城宮の者達は……柚は、大丈夫だろうか」


 暁は月を見上げ、物憂げに言った。


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