朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁は夢を見ていた。


それは、夢というよりも過去の記憶に近いものだった。


 暁が十七歳だった頃、初めて平城宮に物の怪が現れた。


天皇家の近くにいれば物の怪に襲われることはないと思っていた人々にとって、突然現れた物の怪は恐怖以外の何物でもなかった。


人々は混乱し、怖れと天皇一族に対する不信感が一気に募っていた。


 その頃の暁は、物の怪の気にやられないように天皇家一族を守るだけで精一杯で、末端で働く者たちまで守れるほど強くはなかった。


その間に物の怪は力をつけるべく平城宮で働く者たちの魂を次々と喰っていった。


また犠牲者が出たと騒ぎになっているのを聞きながら、人知れず心を痛める日々を送っていた。
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