朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
数日後、暁の耳に恐ろしい報告が入った。


その知らせを受けるや否や、暁は顔を蒼白にして帝のいる紫宸殿の御所へ衣を床に滑らせながら走った。


 紫宸殿の中でも一番大きな殿舎に帝はいた。


その殿舎は、謁見用に造られた部屋で、上座の一段高くなっている場所に帝が座り、段のすぐ下に皇后や皇子皇女がいて、そこから順々に身分の高低によって下座に座っていた。


襖は開けられ、立派な庭が広がっている。


庭にも見張りの者が何人か立っていた。


 渡殿を息を切らせ走ってきた暁は、部屋へ入るなり大きな声で叫んだ。


「父上! なにゆえ甲斐を打ち首にしたのです!」


 上座には薄絹の天蓋が垂れていて、帝の外形は見えるけれど顔の表情までは見ることができない。


扇で顔を隠した皇后(つまり暁の母)が、暁を咎めるように細い声を出した。


「これ、暁。帝の御前で頭が高いぞ。それにそんな大声を出さずとも帝は聞こえていらっしゃる」
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