朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁が苦しげな表情で皇女に言うと、それを聞いていた帝が笑い出した。


「余でも防ぎきれない? 見くびるなよ暁。

余は力を宮の者達に使ってなどおらぬ。

なぜ余が末端の者達のために力を使わなければいけないのだ」


 これには暁は驚きを隠せなかった。


帝が平城宮を守っているのだと思っていた暁は、帝の負担を少しでも減らすために、力を天皇一族だけに集中して使っていたのである。


言われてみれば誰からも帝が平城宮を守っているとは聞いたことがなかった。けれど、それは帝として当然の行為だからあえて言う必要などないことだと思っていたのだ。


もちろん宮で働く者たちも、当然帝が守ってくださっていると思っている。


宮の者たちが今の帝の言葉を聞いたらどう思うか、考えるだけで心が痛んだ。


「帝の仕事は、民を救うことではないのですか!」
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