朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁は声を荒げ叫んだ。


しかし帝は一向に気にする様子を見せない。


「民は余のためにいるのだ。民のために余がいるのではない」


「それならば、帝のために民が死んでいっても、あなたは心が痛まないのですか」


「当たり前だ。なぜ余が民のために悲しまなければいけないのだ」


 暁は怒りで頭がふらふらした。


周りを見渡すと、母も兄も姉も帝の言葉をごく自然なことだと思っているようだった。


物の怪によって何人死のうが、彼らには全く関係のないことなのだ。


補充はいくらでもいると思っているかのようだった。


 暁は今まで、何のために彼らを守っていたのか分からなくなった。


力があるのに、力を使うことを面倒臭がっている彼ら。


暁は彼らより力が強いことは分かっていたので、彼らのために力を使うことに疑問すらも抱いていなかった。


強い者が弱い者を守る。


それは暁にとって当然の行為だからだ。


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