朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁が手を貸す必要はないと思われた。


しかし帝は、一族のためにも力を使ってはいなかった。


守れる力があるのに放っておいたのだ。


そのことに気付き、暁が意地を捨て皆を守ろうとした時には、物の怪の力は防ぎようもないくらい増大していた。


 姉が死に、兄が死に、そして母も死んだ。


一族の強大な力を奪い取っていった物の怪は、ついに帝までも喰ってしまった。


早いうちに対処していれば、こんなことにはならずに済んだかもしれないのに。


己の力に自惚れ、他者を見殺しにしてきたつけが回ったのだ。


 だが暁は、自業自得だと鼻で笑えるほど冷酷な男ではなかった。


次々と身内が死んでいく度に、己の力の弱さを嘆いた。


物の怪に対して怒りや憎しみが湧く度に強くなっていった。


暁は全ての人を救えるようになりたいと孤独に戦い続けてきたのであった。
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