朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「だから、暁のせいじゃないってば」


「柚のことを守れなかった自分が不甲斐ない。稚夜には感謝してもしきれぬ。柚が生きていて良かった……」


 柚は何も言えず、丸くなった暁の背中をポンポンと撫で続けた。


本気で心配してくれた様子を見て、柚は目頭が熱くなった。


 例え、一時の仮の妻であっても。


いつかは暁に本当に愛する妻ができるのだとしても。


それでも、やっぱり、柚は暁のことが好きだと思った。


 気持ちに無理やり蓋をしていた。


本当は気付いていたのに、気付かないふりをしていた。


認めたくなかった。


認めてしまったら、いつか悲しむ日がくると思っていたから。


 でも、もう抑えきれない。


暁を目の前にしてしまったら、否が応にも愛しい気持ちが溢れ出してしまった。
< 169 / 342 >

この作品をシェア

pagetop