朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
(好きだ。私は暁のことが、好きなんだ)


 胸が締め付けられる。


切ないけれど、嬉しい気持ち。


この気持ちが恋なんだと気付いたら、少しだけ気持ちが楽になった。


 柚の首筋に顔を埋めていた暁が、顔を上げると、柚の顔を見て驚いた表情になった。


「どうした、柚。なぜ泣いている」


「え? ああ、本当だ」


 柚は言われて初めて自分が泣いていたことに気が付いた。


笑いながら、涙を拭う。


「なんでだろ、暁が帰ってきてほっとしたのかな」


 暁は柚の言葉に胸がきゅっと締め付けられた。


愛しさが込み上げてくる。


「柚……」


 暁は柚の頬を撫でながら、意味もなく名を呼んだ。


瞳と瞳がぶつかる。


そのまま顔を近付けて、ゆっくりと味わうように唇を重ねた。


柚は目を瞑り、久しぶりの暁の唇の感触に身を委ねる。


離れていた時間を埋めるように無我夢中で貪り合う二人のキスは、その後長い間続いた。
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