朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
途端に気分が重くなる。


忘れたわけではないけど、今の関係があまりにも居心地がいいから、暁が自分のことを本気で好きじゃなくてもいいかと思っている。


それに、暁は柚のことをとても大事にしてくれるし、恋愛の好きじゃないかもしれないけど、好意はあることは確かだと思う。


それだけで、十分だ。


「貴次には関係ないじゃないか」


 柚は貴次からそっぽを向いた。耳の痛いことは聞きたくない。


「自分のことを愛していない男に抱かれるのですか。軽薄な女ですね」


「なっ! 抱かれると決まったわけではないだろう!」


「期待しているくせに」


「そんなことない!」


「顔に書いてありますよ。純情なふりして、たいした淫乱ですね」


「言わせておけば……っ!」


 柚はカッとなって思わず手を上げた。


その手を貴次はぐっと掴む。


「い、痛いっ」


 凄い力で手首を掴まれて、柚の顔が歪んだ。


貴次は眉一つ動かさない冷静な顔をしているが、怒っているのが雰囲気から伝わってきた。
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