朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
その頃、暁はニヤニヤしてしまう顔を必死に抑えながら柚の部屋へ向かっていた。


公務を終え、緩やかな寝着に着替えて柚の元へ急ぐ。


 昼間の言葉は、柚を少しからかっただけで、いつものように「なに馬鹿なこと言ってるんだよ」と侮蔑するような冷めた言葉が返ってくるかと思いきや、意外に可愛らしい反応が返ってきたので、これは距離を縮める絶好の機会なのではと暁の心は躍った。


 さあ、どんなことをしてもらおうかと悪戯心が湧いてくると、どうしてもいやらしいことばかり考えてしまって、ついつい顔に締まりがなくなってしまう。


 柚の恥ずかしがる赤い頬や、甘い声を想像してしまって「いかん、いかん」と何度も頭を振る。


どこまでなら許されるのだろうと真剣に考え、ここは一気に男らしく最後まで! とぐっと拳を握りしめたりするのだが、

「いやいや、約束してしまった手前、きちんと柚の気持ちを聞いてから順序正しく誠実に」

とも思ったり、暁の頭の中はぐるぐると目まぐるしく変わっていくのである。
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