朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「来ない! 暁は私のためにそんな危険を冒すはずがない!」


「いいえ、私は帝を知り尽くしています。帝はあなたに首ったけだ。命を懸けてでもあなたを助けにくるでしょう」


「なっ! 暁は私のことを好きではないと言ったのはお前だろう!」


 柚の言葉に貴次はくくくっと喉を震わせて笑い出した。


「嘘ですよ。

傍から見れば誰にだって帝があなたに心底惚れていると分かるのに、あなたは帝を信じず私の言葉を鵜呑みにした。

まったくもって本当に、馬鹿な女だ」


「そんな……!」


 柚は真っ青になった。


暁の言葉や優しさを、貴次にまんまと騙されて疑ってしまった自分が許せなかった。


 暁が柚のことを好きだという事実は嬉しいが、自分を助けに罠の張られたこの場所に来てほしくはなかった。


貴次の今の言葉こそが嘘であってほしいと思った。


自分のことを好きじゃなくて構わないから、お願いだから一人でこんな危ない場所に来てほしくない。


柚は心からそう願った。
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