朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「なんということだ。貴次が物の怪を操っていた黒幕だったとは……」


 暁は心底悔しそうに奥歯を噛みしめた。


「先代の帝が陰陽師一族を根絶やしにしたように、皇族全員を殺せば稚夜が帝になれる。私の目的はもはや完結したも同然でした。

しかし……」


 貴次は暁を睨みつけた。


「あなたの存在が誤算を生じさせた。

あなたは予想以上に強くなってしまった。

もっと早くに殺しておけば良かったと何度後悔したことか」


「当たり前だ。余は、お前や物の怪ごときに殺られはしない。

しかし、まさか貴次が陰陽師一族の生き残りだったとは。

いつも口うるさいお前を、弟のようにも兄のようにも思っていた。

お前に裏切られていたとはな。

これは全て余の責任だ。

お前の闇を見抜くことができなかった余の落ち度だ。

物の怪に憑りつかれ、もはや人間とはいえなくなったお前を殺してやることが、余が貴次に最後にできるはなむけだ」


 暁は貴次を真っ直ぐ見据えると、指一本すら動かなかった腕をぐぐぐっと持ち上げた。
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