朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
これには貴次も驚き、思わず一歩退いた。


「さすがですね。鉄壁の結界を破るとは。

今の私と物の怪の力ではあなたを殺せないでしょう。

しかし、人間の命をこの場で奪えば更に私と物の怪の力は強まる」


 貴次は腰に差していた長剣を引き抜いた。


薄暗い洞窟内にキラリと白刃が輝く。


「何をするつもりだ!」


 思わず暁が叫ぶ。


貴次は暁の方を一瞬嘲るように斜め見てから、柚の顔を見下ろした。


「完璧だと思えた私の策略は、誤算が増えていった。

あなたも私の誤算の一つでした、朱雀の巫女。

まさか私が本気であなたに惹かれるとは。

覚えていますか?

私と帝は正反対の性格なのに、不思議と好みが似るということを。

なぜ私のものにならなかった。

私のものになれば、あなたを殺さずに済んだのに」


 貴次は長剣を持ちながら、じりじりと柚に近付いていった。


「あっ…あっ……」


 柚は恐怖で真っ青になりながら貴次の瞳を見ながら後ろに下がっていくが、洞窟の壁にぶつかってもはや逃げ場がなかった。
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