朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「待ってください!」


 それまで気配を消して黙っていた由良が突然叫び、柚を守るように覆い被さった。


そして由良は瞳に涙を蓄えながら、キッと貴次を睨みつけた。


「お話が違うではありませんか! 柚様は殺さないとおっしゃったから、わたくしは……!」


「うるさいっ! 邪魔だ、どけ!」


「どきません! 柚様を殺すならわたくしを殺せばいい!」


 柚は驚いて思わず「由良……」と口にした。


すると由良は、振り返って柚の顔を見た。


頬には大粒の涙が伝っていた。


「柚様をこのような目に合わせてしまい申し訳ございません。

わたくしは、貴次様をずっとお慕いしていたのです。

貴次様に振り向いてもらえないと分かっていても、好きだったのでございます。

貴次様が柚様のことを好きだと知り、わたくしは柚様に嫉妬してしまったのです。

それでこのような恐れ多いことをしてしまいました。

本当に申し訳ございません。

この罪は命をもって償いたいと思います」
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