朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「何言ってんだよ由良! 死んで詫びるなんてそんなの駄目だ!」


 由良は泣きながら首を振った。


そして貴次の方に再び顔を向ける。


「貴次様。柚様を殺すのならわたくしを殺してください」


 貴次は長剣を持ったまま狼狽えた。


しかし、暁が結界を今にも破りそうになっているのを感じて、貴次の魂に宿る物の怪が騒ぎだし、貴次の心を操っていく。


「……いいのか?」


「はい。貴次様の手で殺してください」


 由良は真っすぐな瞳で貴次を見つめ、口元に頬笑みを浮かび上がらせた。


その顔を見て、柚はどんなに由良が貴次のことを愛していたのかが伝わって胸が痛んだ。


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