朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「……どうした、貴次。今更怖じ気づいたか」


 暁は貴次を見上げたまま、うっすら微笑みを浮かべた。


貴次の言う通り、もう力は残っていなかった。


ほんの少し集中力を切らせばすぐに失神してしまうほど憔悴しきっていた。


貴次が長剣を振り下ろせば、簡単に暁を殺せるだろう。


それなのに、貴次は長剣を上に掲げたまま動かなかった。


「私は……」


 貴次は明らかに戸惑っているようだった。


自分の中の何かと格闘しているようにも見えた。


悔しげな顔で暁を見下ろしている。


絶対的優位なのは貴次の方なのに、失神寸前の暁の方が眼光鋭く余裕があるように見える。


とはいっても、暁の微笑みは虚栄である。


そのことは貴次も十分分かっているはずなのに、貴次は暁にとどめの一撃を下せずにいた。


「あなたを殺さなければ稚夜が帝になれない」


「ああ、そうだな」


「でも、私はあなたを……」
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