朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
通りでは森の中で出会った眉目秀麗な男性が屈強な男達を引き連れて去って行った。


どうやら小道にいた柚たちには気付かなかったらしい。


ほっと安堵した様子で、男は柚を抱いていた腕を解いた。


 彼らが遠くへ行ったのを確認してから、男は考え込むように、自分が倒してのびている男三人を見下ろして言った。


「こいつらに私の顔と強さがバレてしまった。もう女装したとて私を捕えてはくれまい。こうなっては仕方ない。お主に女装してもらうぞ」


「私は最初から女だ!」


「うん、まあそうなのだが。女の格好をしてもらうという意味だ」


「なんで私がそんなこと」


「元々邪魔したのはお主だろう」


「なっ! 困ってると思ったから!」


 怒って反論した拍子に柚のお腹が豪快に鳴った。


試合が終わってから何も食べていない。柚は腹ペコだった。


鳴るお腹を抱えてきまりが悪そうに俯くと、男はにやりと笑った。


「協力してくれれば飯を食わせてやるぞ。どうだ?」


 柚は口を尖らせ、渋々ながら頷いた。


この世界で頼るあてもなければ、お金もない。


こんな怪しい奴に付いて行くのは不安だったが、柚には選択の余地がなかったのである。
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