朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
貴次の瞳が赤く染まり、貴次の目から一筋の血のような涙が頬に伝った。


「さようなら、帝」


 貴次は迷いを捨て、真っ直ぐに剣を振り落とす。


暁は最期を悟り、固く瞼を閉じた。


 鮮血が高く飛び散る。


貴次の長剣は確実に心臓を捉えていた。


暁は覚悟を決めて目を瞑ったのに、痛みの感じない身体を不思議に思い、瞼を開けた。


するとそこには驚き固まる貴次と、長剣が胸に刺さり倒れ込む柚の姿があった。


「柚っ!」


 暁は倒れ込む柚を抱きかかえた。


先程まで動くことすらできなかったのに、身体が自由になっていた。


貴次が動揺したせいで結界が解けたらしい。


 柚の身体から生温かい血がどんどん溢れてくる。


柚は長剣を胸に刺したまま苦しそうに息を吐き暁をぼんやり見つめていた。
< 210 / 342 >

この作品をシェア

pagetop