朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
柚の頭に真っ先に浮かんだのは暁だった。


親でも弟でも友達でもなく暁。


もう二度と親と会えなくなるのは確かに悲しいし申し訳ないとは思うが、柚が切に会いたいと思い心残りなのは暁のことであった。


 最期に柚は暁に言いたいことがあった。


好きだと伝えたかった。


そのたった一言が言えずに永遠に別れることになった。


もっと素直に接していられれば。


自分の気持ちを押さえ込まずに、もっと早くに自分の気持ちに気が付いていれば。


後悔は波のように襲ってくるが、もはやどうすることもできない。


暁の幸せを遠くから見つめることしかできないのだから。


 下を見つめ落ち込む様子の柚を見て、朱雀はため息を吐いた。


「今更他人に命を渡したことを後悔しても遅いぞ。もう元には戻らないからな」


「そうじゃないんだ。そのことについて後悔はない。ただ……」


「ただ?」
< 220 / 342 >

この作品をシェア

pagetop