朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
今の暁は憔悴しきっていて悲しみに打ちひしがれている。


今の暁には、いつものひょうきんさや強さは感じられない。


ぽっきりと折れてしまいそうな小枝に見える。


暁がこんなにも自分が死んだことを悲しんでいるとは思わなかった。


近くに寄って慰めてあげられない自分の不甲斐なさを申し訳なく思う。


「そんなにあの男の元へ行きたいのなら、他の奴に命を渡さなければ良かったものを」


 朱雀は鏡の前で涙を流す柚を見てぼそりと言った。


しかし柚は首を振った。


「いいんだ、これで。私のために命を捨ててくれた人がいるのに、我が身かわいさでのうのうと生きていくことはできない」


 朱雀はじっと柚の顔を見つめた。


色気がなく男のような女だと思っていたが、よく見ると可愛らしい顔つきをしていることに気がついた。


多少生意気だが、それも愛嬌のように思えてくる。


自分のことよりも他人のことを思い簡単に命をあげてしまう柚のことが妙に気になりだした。
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