朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
柚が暁に好きだと打ち明けたあの日。柚の部屋専用の庭は穏やかな陽だまりに包まれていた。


「え……? 今、なんと言った?」


 先刻まで優しい微笑みを浮かべていた暁であったが、柚の突然の告白に顔が驚きで固まった。


「なんだよ、聞こえてなかったのかよ。人がせっかく勇気出して言ったのに」


「いや、しっかり聞こえたのだが。え……それは……誠であるか?」


「嘘言ってどうするんだよ。ていうか、好きでもない奴と結婚なんかしないっつーの。なに驚いてるんだよ、今さら」


 柚は照れ隠しで、暁の顔をわざと見ないようにしながらぶっきら棒に言い放った。


対して暁は、柚の顔を凝視しながら尚(なお)も驚きの表情で固まっている。


「柚……」


 暁は驚きで固まった表情のまま、柚の名を呼んだ。


「な、なんだよ」


 柚は恥ずかしさで俯きながら小声で言った。


無駄に小石を蹴ってみたりする。


「柚っ!」


 突然暁が大きな声を出し、柚の両肩をガシリと大きな手で掴んだ。


真正面で向き合うように肩を横にひねらせたので、柚は驚いて「わっ」と声を上げた。


そしてそのまま暁は、覆いかぶさるように柚の唇に自身の唇を重ねた。


力強く、押し付けられるようなキスは暁の情熱を表しているかのようだった。


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