朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~

書物庫の接吻、の巻

それから瞬く間に数週間が経ち、新居建設は怒涛の勢いで進められていた。


国中の大工職人が集められ、驚くほどの速さで建設が進んでいる。


それでも暁は職人たちに建設を急かし、日に何度も建築の進み具合を確かめに来た。


はっきり言って邪魔なのであるが、帝は早く婚儀を行いたいのだろうと、平城宮の人々は苦笑いしながらも温かく見守ってくれていた。


 それは全くの的外れではないのだが、暁が急かす本当の理由は、柚との婚姻の儀よりも、柚との甘い一夜を切望しているからとは誰も知らない。


いや、知らない方が暁の品位の為にもいいであろう。


 そんな中、柚は平城宮内を自由に歩き回っていた。


そして、本当はあまり好ましくないのであるが、政務所である紫宸殿にこっそり足を伸ばしていた。


女が紫宸殿に入ることは禁忌とされており、以前なら問答無用でつまみ出される行為だったが、柚が物の怪の脅威から救った朱雀の巫女であることや、帝の寵愛人ということもあり、柚が紫宸殿に入っても見て見ぬふりがされている。


それでも、古くからのしきたりを重んじる老臣などからは不愉快に思われることは分かっていたので、柚はなるべく気付かれないようにこっそりと紫宸殿の中に入っていった。
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