朱雀の婚姻～俺様帝と溺愛寵妃～
暁は一軒の邸宅に入っていった。


築地塀が何軒かある建物を囲っており、それら全てが一家族のものらしい。


中に入ると池がある庭園があったが、手入れはあまりされてはいないようで草木が生い茂っていた。全体的にどんよりと暗い雰囲気が醸し出されている。


「ここが暁の家なのか？」


「いや、まったく知らない他人の家だ。柚はここでちょっと待ってろ」


　暁はそう言うと、ズカズカと庭園の中を入っていき、一番大きな建物に向かって「すみませーん、誰かいますかぁ」と声を上げた。


人の家の敷地内に勝手に入って大丈夫なのだろうかと柚がハラハラしながら見守っていると、側仕えの女が応対に出てきた。


暁と何か会話すると、また一端下がり、今度は主人らしき恰幅のいい男が出てきた。


柚は遠くにいたのであまり見えなかったが、この家の主人は何か疲れ切った様子で覇気が感じられなかった。


しかし暁と会話していると、遠目で見てもめきめきと元気が湧いてきた様子で、最後は暁の手を取り泣いて喜んでいる様子だった。
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