朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
遊びで来たわけじゃない、と柚は思った。


暁に会いたいから怒られることを覚悟して来たのだ。


最近、夜に会えなくなって、日中暇を見つけては柚に会いに来てくれるけれども、柚は寂しかった。


もっと一緒にいたいし、もっと話したかったのだ。


 柚は正直に自分の気持ちを言おうか迷った。


会いたかったから、なんて言葉に出すのは恥ずかしすぎる。


「こんな所に私といて大丈夫なのか?」


「ああ、ちょうど一通り片付いた所だったから、しばらく一緒にいれるぞ」


 その言葉に、柚はパアっと笑顔になった。


「それにしても、ここに来るのは久しぶりだな。普段は滅多に訪れないからな。珍しい書物が沢山置いてある」


 暁は柚に背中を向けて、興味深そうに巻物に手をかけた。背中を向けられ、巻物に夢中になっている暁を見て、柚は口を尖らせた。


(せっかく会いに来たのに……)


 柚はなんだかムカムカしてきて、暁の背中に体当たりして抱きついた。


「わっ! どうした柚!」


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