朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
暁は驚いて巻物を落とした。


柚はしっかりと両手で暁を抱きしめ、顔を暁の背中に埋めたまま言った。


「……会いたかった」


 柚は小声で暁に告げた。


消え入るような小さな声だったけれど、静かな書庫内だったので、その声はしっかりと暁の耳に届いた。


柚から抱きしめるのは初めてのことだったので、暁はドキドキしてきた。


「昨日も、会ったであろう」


「そうだけど、会いたかった」


 もっといっぱい一緒に居たい、とまでは言えなかった。


会いたかったと言うだけで、柚には精一杯だった。


 柚の華奢な腕が、暁をぎゅっと抱きしめている。


そのぬくもりと想いがとても嬉しくて、暁の心拍数が上がり、耳が赤くなっていく。


「柚っ!」


 暁は後ろを振り向き、柚の両肩を掴んだ。


目と目がぶつかり合う。


二人はしばらく見つめ合い、そして柚は目を閉じ、顎を少しだけ上げた。


 暁はドキリとした。


柚がキスを求めていることが分かり、更に胸のドキドキは加速していった。



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