朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
このまま真っ直ぐ歩いて行けば彼女たちと鉢合わせることになる。


見たかんじ、どうやら身分の高い女性であるようだし、できれば避けて通りたい所だった。


しかし、今から戻って別の道を行くとなると遠回りになるし、後宮内の女性たちが沢山いる場所を通ることになるので、柚は仕方なく真っ直ぐ進んだ。


いつもなら、相手の方が自ら端に寄り、わざわざ止まってお辞儀をして柚が通り過ぎるのを待っていてくれる。


柚はそれにすっかり慣れてしまったので、ずんずん進んでいった。


しかし、相手の女性たちは一向に止まる様子を見せない。


廊下いっぱいに広がって歩いてくるので、柚は寸での所で端に寄り、衝突することを避けた。


けっこうな速さで歩いてきていたので、あのまま柚が避けなければぶつかっていた。


柚は少し驚きながら柚の横を通り過ぎていく女性を見た。


女性は通り過ぎる時に、切れ長の大きな瞳で柚を睨みつけた。


女性はとても綺麗な人だった。


ツンとしていて気が強そうな顔立ちだ。


物の怪の一件以来、柚にあからさまに敵意を向ける人がいなくなったので、柚はとても驚いた。


女性はそのまま歩き去っていくのかと思いきや、ピタリと足を止め、緩慢な動きで後ろを振り返り、下から舐めるように柚を見た。


柚は蛇に睨まれた蛙のように身が竦(すく)んでしまった。
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